すると母は鋭い眼光で僕を見つめた。
「洋ちゃんいじめられとるんやないの?」
「・・・」
「僕、もう生きていたくないよ・・・」
バチン!!!
手のひら大の重い塊が、僕の頬めがけて飛んできた。
母は僕に目に涙を浮かべ言った。
「洋ちゃんは何も悪いことしてないやないの!!いじめる子っていうのはね、自分のことを大切に思えない可愛そうな子なの。そうゆう子の為にも、洋ちゃん自身の為にも負けたらあかん!!絶対に・・・。」
母の心の叫びは、僕の体に電撃を走らせた。母は常に正しいことを言う。それは、とても厳しい言葉だ。しかし、正直で嘘偽りない心の言葉なのだ。
僕は、行動を起こした。人は、言葉で伝え切れないものがある。口下手な僕は、手紙を書いてみようと思った。僕は切手の収集をしていた。珍しい切手や、きれいな切手、かっこいい切手をたくさん持っていた。今まで、僕をいじめていた子に対して、僕の切手コレクションでその子が気に入りそうな切手を選んで、封筒に貼り、決してきれいな字ではないが、何度も書き直し心を込めて書いた。内容はたわいもないことだった。
「昼休み、ドッチボールの陣地取りで全力で走ってありがとう!」
「今日の給食で揚げパンでたね。おいしかったね!」
「社会の時間、○○君が発言してみんな盛り上がったね!」
手紙を書き初めて、最初のうちは反応もなかったし、何も変わらなかった。でも、僕の心は変わっていくのが分かった。いじめられて、凄く嫌いだった子が、「あんないい所があるのか!」っと気づける自分になっていたのだ。それから、手紙を書くことが楽しくなり、少しずつ周りが変わっていく事を実感した。いじめていた子から、遊ぼうと誘われたり、授業の時わからない所があり苦戦していると、「ここ分かるか?」と声を掛けてくれ教えてくれたりした。
一つ分かったことがある。「自分が変われば周りも変わる」ということだ。小学校を卒業するころには、僕をいじめる子はいなくなっていた。その時、あの日に母が言った言葉は正しかったと強く思った。その後も僕はガリ吉と呼ばれた。しかし、ガリ吉と呼ばれる意味が変わっていたことは言うまでもない。
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