母と、新・井ノ口百貨店をうろついたが、なかなか誕生日プレゼントが見つからなかった。5階を中心にプレゼントを探したが、僕の興味を引く物はなかった。数時間デパート中を歩き続け、疲れてしまった。そこで母と僕は、屋上で休憩することにした。屋上広場の白いベンチに座っていると、母はグレープと書いてある缶ジュースを買ってきてくれた。果汁入りだと思い、激しく腕を回して振った。そして、缶のタブを引き上げると『ぷしゅ~っ!!』という音と共に、中のジュースがふき出した。缶をよーく見ると下に炭酸飲料の文字・・・。僕と母の服はグレープ色に染まってしまった。母が鞄からハンカチを取り出し、ズボン中心に濡れてしまった僕の服を拭いてくれた。そして母はため息をついてこう言った。
「今日は踏んだりけったりやね!プレゼント見つかりそうもないし、かえろっか?」
僕もその意見に賛成だった。デパート中を歩きつくして見つからなかったのだ。そう思わせた決定打は、グレープという名の誰も知ることのないジュースだった。僕はこのジュースのことを一生忘れないだろう・・・。何も収穫がないまま屋上から下りた。屋上はエレベーターが無く、階段で5階まで下りる。疲れた体をおし、階段を下る・・・。5階に着き、エレベーターがある方へ向かった。すると、僕の目にあるものが飛び込んできた。エレベーター乗り場の隅を見ると小さな店があった。思わず僕は母に言った。
「これ!これだよ!!」
それは、切手とコインの店だった。その中でも、店のガラスケースに飾られた切手を見て、体に電撃が走った!僕は一瞬にして切手に魅了されてしまったのだ!!日本の切手でも様々な種類がある。記念切手から、地方の特産、名所、花などが絵柄になったもの、いや!海外の切手もあるぞ!!目立たない店の狭いガラスケースの中には世界の全てが納まっていた。気持ちを抑え切れず、ガラスケースを指差し母に言った。
「誕生日プレゼントこれがいい!!」
それを聞くと母は、笑顔を浮かべほっとした様子だった。そして僕の誕生日プレゼントは、大阪万博の会場でしか売られてなかったプレミヤ切手と、東海道新幹線・開通記念切手、切手を収める為の切手ブックと、流通している切手が載っている本を買った。この誕生日プレゼントから、僕の切手収集の道が始まったのだった。
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