しかし、できすぎる妹を持った兄は傷ついていた。それは、優秀な妹と比較されことからおこる。自分が常に妹あっての兄という目で見られている現状があったからだ。たしかに、妹は僕にとっても大切な妹だ。でも、どうしても割り切れない部分がある。同級生からは、「妹は頭いいし、可愛いし、運動神経抜群。その点、おまえは何もとりえの無い所詮ガリ吉だな!」などと言われていた。『自分にはとりえも長所もないのか!』と自問自答し、悩み続けたあげく、僕はお母さんに勇気を持って、その気持ちを打ち明けることにした。
「お、お母さん!!」
母小百合は洋吉の大きな声に驚くようにして洋吉の方へ振り返り言った。
「いきなり大きな声出してどうしたん??」
洋吉は勇気を振り絞り小百合に話した。
「奈緒と僕よく比べられて、奈緒と比べて、兄貴はダメ兄貴やって言われてるんだ・・・。」
小百合は洋吉の目を見て、うなずきながら最後まで話を聞くと、洋吉の両肩を抱いてこう言った。
「洋ちゃんも、奈緒も私にとって大切な子供だよ!」
「まわりの人がなんと言おうとそれに変わりはあらへんよ!」
洋吉は続けて小百合に聞いた。
「じゃあ、僕の良いところってなに?」
すると小百合は抱いた肩を更に強く抱きしめて言った。
「洋ちゃんは、人の辛いことを自分の苦しみとして感じられる優しい子やないの」
「成績が良い、それもいい事やね。」
「スポーツが出来る、それもいい事やね。」
「でもね、洋ちゃんの優しい心は洋ちゃんしか持ってないんやで!」
「洋ちゃんが、どんな事言われたって、お母さんは洋ちゃんを信じてるよ!」
「だから負けるんやないよ!!」
その言葉を聞いて洋吉は、胸の中に詰まっていたものが、いっきに流れたようにスッキリとした。それと同時に感情があふれ出し、目からは大粒の涙があふれていた。
PR