井ノ口市周辺は富有柿という柿の産地だ。スーパーなどに行くと柿はあるものの、ほとんど買った記憶がない。秋になると井ノ口のあちこちで、だいだい色に実った柿の木をよくみかける。僕の住んでいるところでも、近所の家に柿の木を育てている家庭が多い。よく近所の方が、「たくさんできたから、どうぞ!」とスーパーの袋いっぱいに柿を頂くことは、秋の恒例となっている。柿の木が実ると秋の訪れを知り、また、子寒くなった辺りの風から、冬が近づいていることを伝えているように思える。
井ノ口市で有名なのは、夏に行われる長良川鵜飼(うかい)だ。鵜飼とは夜、船の上でタイマツを焚き、火の光で鮎をおびき寄せ、鵜という鳥に鮎を捕らる。とった瞬間に鵜匠(うしょう)と呼ばれる人が、鵜の首に結んだ縄を引っ張り鮎を捕獲する伝統漁法だ。鵜にしてみれば捕った魚を人間に取られて、なんて可哀想なんだろうと、鵜飼を社会の授業で知った小学生の時に思った。その時に教えていた先生は、「可哀想だと思うかもしれないけど、鵜に鮎を食べさせないわけじゃなくて、漁が終わったらちゃんとあげるんだよ!」と言っていた。それを聞いた僕は、苦し紛れのコメントとしか思えなかった。僕も小学3年生の時、父親、父親の会社の人、母親、妹、タイばあちゃんと一緒に鵜飼を観に行ったことがあった。屋形船に乗り込み料理を囲みながら、じっと鵜飼を観ていた。4~5羽の鵜を綱一本で巧みにあやつる姿を見て感動を覚えた。しかし同時に、「綱で引っ張られている鵜は痛くないのかなぁ??」という疑問は幼いながら拭えなかった。
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