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斎藤芳盛
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如月家を影で守ってきたのは、やはり母だったといえる。しかし、決して父をかばうわけではないが、父も尊敬できるところがある。それは、夜遅くまで柳ヶ瀬で飲んできても、仕事に支障をきたした事が一度も無いという事だ。父は柳ヶ瀬に飲みに行くと、夜中の2時か3時に帰ってくる。それからほとんど寝ずに仕事に向かう。特に職人の朝は早いのだ。父の場合、どんな寝不足であろうとも朝5時には起き、そして、従業員の誰よりも早く会社へ向かう。父は社長でありながら、現場第一主義を貫き通してきた。職人としてのプライドを懸けて働くのだ。僕は、父の事を不死身の男だと思っている。しかし、いくら父が働いてもその頃、貧乏生活からは抜け出せなかったのだった。

貧乏生活真っ只中の小学生時代、僕は勉強が大の苦手だった。通知表の成績は5段階評価で、ほとんどが1か2だった。3以上だったら奇跡といわざるおえない状況・・・。しかし、一つだけすきな教科があった。それは、図工だ!好きこそ物の上手なれという言葉があるが、図工だけは5だった。その中でも特に絵を書く事が好きで夢中になって絵を描いた。授業中、水彩画を描いている際、乾燥して硬くなった絵の具のチューブを破り、固形になった絵の具を溶かしながら使っていた。しかし、如月家は貧乏で僕は、母に絵の具を買ってなどという事は言えずにいた。そんなある日のこと、ご飯を済ませると母が僕を呼んだ。

「洋ちゃん!ちょっと来なさい!!」

僕は何か怒られると予感した。母が怒ると、父が怒るのと比較にならないくらいに恐い!命の危険さえ感じる時がある。しかし、ここは勇気を振り絞り母の方へと向かう。

「お母さんな~に??」

母のもとへ近づいていくと母は言った。

「洋ちゃん。図画工作の絵の具、もうそろそろなくなる頃じゃない?」

驚いた!!何で知ってるのかと・・・。やはり母に隠し事は出来ない事を、この時以上に悟ったことはない。僕は苦し紛れに母に言った。

「ま、まだ大丈夫・・・。」

すると母は、僕の冷や汗まじりの表情を見て言葉を返した。

「なに言ってんの!もう一年も絵の具買ってないじゃないの!」

「洋ちゃん絵が好きやからたくさん絵の具使うんとちゃう?」


「これ、使い・・・。」


母に渡された紙袋を開けると、そこには絵の具が入っていた。しかも、16色入りで金色と銀色の入った絵の具・・・。きっと母は家計のやりくりをして、僕が絵を書くことが好きで、そのことを知ってて買ってくれたんだ。今まで僕は10色以上の絵の具を使ったことが無かった。その分、母の気持ちが込められているように思い、すごく嬉しかった。

「お母さんありがとう!大切に、大切に使うよ!!」

と僕が言うと、その言葉を聞き、母は「うんうん。」とうなずきながら笑みを浮かべていた。

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