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斎藤芳盛
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小百合は殺されると思った・・・。
その男が恐怖感を沸き立たせるいでたちだったからだ。男は小百合に声をかけた。
「こんばんは。僕、酔っていませんので・・・」
小百合は唖然とした。荒々しい人間だと思ったが男の声が予想外に静かだったからだ。男は、小百合が飲んでいた飲み物を横にずらし、下に敷いてあった紙製の丸いコースターを手に取った。白いスーツの内ポケットから手帳を取り出し、挟んであったペンでコースターに何かを書き始めた。書いたあとコースターを内側に折り、男はそっと小百合に渡した。すぐに男は一緒に飲んでいた仲間のところへ戻り、それから話すことはなかった。小百合はアパートへ帰り、コースターを見た。名前と電話番号が書いてある。『如月竜次 tel・・・・』
丁寧でキレイな字だった。小百合はギャップを感じた。男に対する初対面の印象は最悪だったが、紳士的な人・・・。

それから一週間の間の間、小百合はコースターに書かれた如月竜次という男が気になっていた。如月竜次という男に電話してみようと思った。自分が悪い印象を持っていたことに罪悪感を感じていたし、小百合にとって男は気になる存在になっていた。電話をしてみた。少し怖いと思ったが迷いは無かった。しばらくコール音が鳴り男が電話に出る。

「もしもし、如月です・・・」

小百合は少し混乱して何を話しているのか自分でも分から程だったが、沈黙を恐れて話し続けた。それに対して男は思いのほか落ち着いた様子だった。会話は続き、男は当時27歳で井ノ口市内の土木業者に働いている事が分かった。初対面ではもっと年上のような印象を受けたもが、思いのほか若かった。自分には無いものを竜次に感じた小百合は、一週間後の日曜日に食事をする事になった。

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