一週間後の日曜日、井ノ口市街のレストランで竜次と小百合は食事をした。竜次の服装は始めて会った時とは違い、カジュアルな服装だった。当時のアイビールックと呼ばれるファッションで竜次はきめてきていた。しかし、パンチパーマは変わらぬところだった。小百合は竜次に対し恐ろしい印象を抱いていたが、話していくうちにそれは解消されていった。それどころか、包容力があり、生い立ちなどを聞くと小百合の経験したことのない苦労もしていた。小百合はお嬢様育ちの為、竜次のように自分で道を開いてきた人と出会ったのは始めてだった。それから、何度かデートを重ね小百合は竜次を信頼できる男性だと思った。交際し始めて1年が過ぎた頃、二人は一緒に家庭を持ちたいと意識し合っていた。竜次と小百合は、小百合の両親に会いにいくことを決意する。
数日が過ぎ、竜次と小百合は新羽島駅から新幹線に乗り、神戸へ向かった。小百合の両親がどんな反応を示すかは目に見えていた。小百合の両親は名家とよばれる家にしか娘を嫁がせないと決め込んでいたからだ。竜次は粗相があってはならないと、紺のスーツと慣れない渋めのネクタイをぎゅっと締め、緊張からか、新幹線での二人の会話はほとんどなかった。
神戸の実家の前に二人は立っていた。小百合は竜次を連れてくる事を知らせずにいた。なぜなら、会う前から厳しく両親に反対され、竜次を会わせられなくなるのは必然だったからだ。
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